「バケモノの子」感想 【ネタバレ注意】
細田守監督の最新作「バケモノの子」をTOHOシネマズ 市川コルトンプラザで観てきました。
「金曜ロードSHOW!」で、細田作品を連続で放送していた事もあり、時間もあったので、これは観てこなきゃという事で行ってきました。
※ネタバレありなのでご注意を。
あらすじ
母親の死から、一人で生きていく事を決めた少年は、渋谷の街で生き抜いていた。ある日、バケモノの熊徹と出会った少年は、バケモノたちの住む「渋天街」へと迷い込む。
そこで熊徹の弟子となり、九太という名前を付けられる。しかし、熊徹はこれまで1人で強さを極めてきた事もあり、人に教える事がまったくできない。粗暴な熊徹と九太は、たびたびぶつかり合う。
バケモノの世界では、現宗師が神様に転生するという事で、次期宗師を決めなければならなかった。その候補の一人が熊徹で、もう一人がライバルの猪王山であった。
熊徹の弟子として家事をする傍らで、熊徹の動きをまねているうちに、姿が見えなくても熊徹の動きが読み取れるようになる。師匠である熊徹の動きを読み切ってやりこめる九太。しかし、九太には剣術も武術も出来ない。お互いに、教え合うという、どちらが師匠なのかわからない修行の日々が続く。
時が過ぎ、17歳となった九太は、いつものように熊徹との言い争いから逃げていくうちに、人間界への入り口に迷い込み渋谷の街へと戻ってくる。
九太は、図書館でこれまで教わる事のなかった書物を読もうとしていた。しかし、小学校も出ていないには読めない漢字が多く読むのに四苦八苦していた。そこで、たまたま読み方を教えてもらった女子高生・楓と知り合いになる。自らの本当の名前が蓮である事も明らかにする。
楓から様々な事を教わるうちに、もっともっといろんな事を知りたいという欲求が深まる。大学受験をすすめる楓とともに、市役所を訪れた九太(蓮)は、父親の住所を知る。母の死の際には離婚していて連絡も取れずにいたのだった。父親と再会した、九太(蓮)だったが、なかなかうまくいかない。渋天街と渋谷の街を行き来しながらも、これからの生き方に迷い始める九太。
親子か師弟か
この話の根幹になっているのが、新しい形の親子関係という事なんですが。九太と熊徹というのは、師弟関係でありながらも、親子のような関係でもありました。そこにあるのは、熊徹が一方的な師匠という立場ではなく、九太が教える事もあり、お互いに成長していくというものでした。そこには、熊徹だけではなく、熊徹の仲間の多々良や百秋坊の存在も大きくありました。
そういう関係性もあった事で、人間界で実の父親とのやりとりに違和感を覚えたのでしょう。父親から見れば、一人で生きてきたように見える九太(蓮)は大変だったと思うのでしょうが、熊徹と過ごした日々は実に充実したものだった訳ですから。
ただ、最終的に九太(蓮)は人間界で生きていく事を決断します。これは、もちろん九太(蓮)が元々もっていた知識欲というものもあるのでしょうが、熊徹と一心同体になった事でバケモノの世界と離ればなれになるという事が避けられた事も大きいでしょうね。
九太(蓮)の才能
熊徹と出会った頃の九太は何も知らないただの9歳の少年でした。炊事・洗濯も百秋坊から教えてもらってどんどん吸収していくと、熊徹の動きを見よう見まねで完全に把握して言いくるめるまでになります。これは、九太自身は気づいていないようですが、百秋坊から言わせても、ものすごい上達スピードなんだとか。実際、17歳の時点でバケモノの熊徹と互角に戦えるようになっていました。
この時点では、九太の才能は武術の方にあると思っていたのですが、楓と出会ってからの学問の吸収スピードも早かったようです。9歳当時の読み書きくらいしかしらなかった九太が楓のささえがあったとはいえ、大学受験を目指そうというところまできたのですから驚きです。
楓との出会い
熊徹と生活を共にするようになってから、まったく人間界への未練はなくなっていたと思っていた九太でしたが、偶然人間界へと戻れた後の行動は不思議でした。
確かに、バケモノの世界では教えてもらわなかった事がたくさんあったのでしょうが、訪れた先が図書館だったといのは意外でした。そこで出会ったのが楓ででした。楓と出会った事で、九太(蓮)の眠っていた知識欲が呼び出されます。
九太(蓮)にとっては、再び人間界で生きるという選択肢が広がり、さらに会う事はないと思われた父親とも再会した訳ですから。そして、改めて熊徹との微妙な師弟関係・親子関係の絆の深さに気付かされたわけでもあります。
バケモノの世界観
バケモノの世界は、人間界と比べると随分と古い時代のようなイメージがします。しかも、日本ではなく古い時代の中国辺りの風景にも見えます。
バケモノの世界と人間界は、まったく閉ざされているわけではなく、一定の行き来があるようです。そう考えると、人間界の文明がほとんど持ち込まれていないのは不思議な感じがします。
実際にはモノだけではなく、人の行き来もバケモノが人間界にやってきているだけで、人間である九太や一郎彦が住んできているのが特別となっているくらいですから。
人間の闇
この物語で事件となったきっかけが、一郎彦が宿した心の闇でした。それは、同じく九太も人間界へ行っている間に宿してしまっていました。
この心の闇の暴走というのがどういう事なのかはわかりませんが、人間界で暮らしている分には同じようなことにはならないと思います。バケモノの世界で、人は心に闇を宿すという事で、ある意味恐怖の対象でもありました。
おそらくは、人間の心の闇がバケモノの世界で生きてきた事で具現化されてしまったという事なのでしょう。それもあり、バケモノの世界に人間を連れてきたがらなかったと思われます。
心の闇に支配された人間は、バケモノの世界をも滅ぼしかねない存在であったというのは、一郎彦の暴走を見ればうなずけます。
まとめ?!
この映画を観ていて途中から思っていたのは、九太がなりたいものはなんなんだろうという事。バケモノの世界でくらしてきた九太は格闘術でもかなりきわめてきました。人間界で新しい知識を得て、もっといろんな事を知りたいというのもわかります。
ただ、人間界で生きていくにしても、会社員になる九太は想像できないですからね。どちらかというと学者だったり、小説家だったりという方面の方が想像はできますが。
結局、熊徹は九太の中に取り込まれるという形でなりました。文字通り、心に一本の刀を持つという事になった訳ですが。人間界で生きてこうと決めかけていた九太からすれば、結果的には熊徹とも別れずに済み良かったという事になるんでしょうか!?
しかし、熊徹が事あるたびに、中からどなりちらす訳ですから、それはそれでやっかいだなとも思ってしまいますね。
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